容姿へのこだわり

大切なのは外見じゃなく中身だよ、とは、よく言う。しかし、この言葉をそのまま受け容れる人間が、世の中に果たしてどれだけいるだろうか？やはり見た目もイイ方がいい。本音はそんなものだろう。プロテインで夏用の体を作る男もいれば、日焼けサロンで真っ黒になる女もいる。エステや美容整形はブーム。やはり、誰もが「外見」もこだわりたいのだ。

「人は悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しいのだ」とは、哲学者ウィリアム・ジェームスの言葉。気持ちは外見からやって来る、ということを端的にいったらこの言葉になるのだろう。人の中身は、外からも少なからず影響を受ける。何が美しくて、何が醜いのか、一般的な見方もあろうが、これは殆ど人それぞれの価値観次第でどうとでも変わる。女子高生がだぶだぶの靴下を引きずるのを良しとするモノもいれば、だらしない、と感じる人もいるように。自分の外見は、やはり自分の満足のいくものでありたい。だから、見た目をよくしようと努める。そして、心もそれに追随する。結局、人の心というのは、見かけによってもかなり変わるものなのだ。これは、影響が影響を呼ぶ循環といえる。あ、かわいい、格好いい、と思う。自分もそれを真似てみる。いいかもしれない。だんだんその気になる。ともすれば、以前の自分とは別の人格を持つことになることだってある。それが新たなオリジナルとなり、他へ影響を与えることもあるのだろう。

人は、姿形を気にする生き物。男女関係にしろ、これは適合する。生理的にも納得のできることだ。人も生き物である以上、自分の子孫を残したいと考える。その相手となる異姓は、なるべく容姿の整った健康的な者であるのが望ましい。中身が分からない以上、最初は外見でそれを判断するしかないというのは仕方のない話。

ただ、中身が外見に支配され始めると、それは必ずしも健康的な精神状態とはいえないのではないか？本当にそれが自分の望んでいる姿なのか？世の中のスタンダードに合わせているだけで、その実、自分という者を見失いかけている人が多いような気がするのである。外見は、ある意味重要な者だが、それだけに終始しているのでは本末転倒だろうと思う。

1999/10/02

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