心脳問題ＭＬ

私があのMLを知ったのは、今から約一年前のことだった。その頃はクオ リアなどという言葉も知らなかった。なぜかは忘れたが、心理学関係の 
サイトを徘徊していたときに、偶然あのサイトに出会った。そのときは数ある心理学のサイトの一つだろう、と、そのまま読み流していた。 クオリア、なんてのも、そんな方面の問題だろうな、と決め込んでいた。 

そして月日は流れ、去年の6月くらいだったろうか、自分の主催しているMLで、私たちが信じている物理学は万能だろうか、もっと何か別の真理 
があるんじゃなかろうか、という議論をしてた頃だったと思う。そんな答えになりそうなサイトはないだろうか、とWebを徘徊していたところ、また偶然、あのサイトに再会した。おや、ここは以前来たことがあったな。 確か心理学のことを探していたときだったか。こんなときだから心理学もいいかもしれない。そんな気持ちで、フラリとそのMLへ参加してしまったのだった。 

入ってみれば、全然心理学などではない。むしろ物理学に傾倒した集まりだった。そしてその主催者も物理学出身だという。人の心、そんなもの 
は水物で、私は、絶対今の還元主義では語れないと思っていた。ところがである、マジで物理学で心を解き明かそうとしている人が、まさにそこにいたのだ。衝撃的だった。その瞬間、心理学なんてものは、一気に過去のものになった。 

その人は、一体どんなことを考えている人なんだろう、と思った。そしてその人の著作が出版されていることを知るや、手当たり次第に本屋を渡り 
歩いて探した。そしてやっと見つけた「脳とクオリア」。その中では、今ある神経生理学や脳生理学に疑問を投げかけていた。その面では納得した。そして、脳の現象を物理的な現象に還元しようという試みも、なるほどであった。しかし、それらは私の求めているものではないような気がした。向いている方向は同じだけど、その先が見えていないことも同じだった。しかし、私のような異端児と同じ方向を向いてる真っ当な物理学者がいたということだけでも、大きな安心が得られた気がした。 

MLでは、最初、高尚な議論を傍から眺めているだけのつもりだった。参加はしないつもりだった。だから本名は名乗らなかった。しかし、ちょっと 
口を出してみたくなった。そして、ポツリと一言投稿してみた。すると、奇特な方が反応してくれた。なんとなく嬉しかった。こんなハイレベルな 
聖域で、私のようなシロウトも取り合ってもらえるのだ、と思った。

それから、ときたま独り言のように発言するようになった。反応があれば嬉しいが、私の場合、そんなことよりも、こういう頭脳の集団に自分の 
意見を投稿する、という挑戦自体に意義を感じていた。ひょっとして私の記事を読んでくれて、それで研究の足掛けにでもなることがあればどんなに素晴らしいだろう。そんな妄想で十分だった。 

そして12月。その集団でオフ会をするという。私も行っても良いのだろうか。みんな専門の研究員とか学者とかで、私みたいなパンピーが行くべき場ではないのではないか。そう思いつつ行ってしまった。そして、メンバの面々に会った。心脳問題MLの主催者もいた（当然か）。 

そこで私は、何か妙な安心を得た。なんだ、みんな人間じゃないか。私と同じだ。話すことも考えていることも、人とそう変わっているわけでも 
ない。そこには、至って普通の人間の集まりがあった。

しかし、この集まりから、いつか、何かが弾け飛ぶのではないか。少なくとも、全く別方向を向いている人よりも、ここにいる人たちの方がそれに 
気づく可能性は高いのではないか。そして本当に弾けたそのとき、そんなブレイクスルーを起こしたのは、間違いなく私と同じ人間なのだ、と実感 
するのだろう。

心脳問題MLは、私にとってそんな希望がある場である。

2001/02/09

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