バカにつける薬

自分の意志をなんとか相手へ伝えようと思う。それこそ懇切丁寧に話して聞かせる。しかし、相手はあまり理解していないようである。私だって、おそらくは私の意思そのものを伝えることはかなわないだろう、という予測の上で悪あがきを試みる。伝えたいことの5割も伝われば、それで良しとなる。大抵のコミュニケーションとはそんなもんだろうと思う。

ときに、上に書いたことは、相手の方も、こちらの伝えたいことを何とか理解しようとしてくれるからこそ叶うものだろう。でなければ、そもそもコミュニケーションというものは成立しない。相手もこちらも、自分の意見を云いっぱなし、ということに何の発展もない。結局、それは自分の殻に閉じていることになる。コミュニケーションの意義というのは、自らの意見とは違うものを発見するところに、その第一義があると思う。自分の意志を相手に伝える、というのは、相手からそれを引き出す一つの手段である。

これが分かっていない輩が、MLやNGなどのコミュニティへやってきて、人の同意を得ようとする。ああいうのは、単に自分の考えが間違っていないことの確認か、或いは安心を得ようとしているだけなのだろう。そこで目的が果たせないと、あとはダダっ子である。

ところで、そんなことを云っている自分は、果たして大丈夫だろうか、と、ふと思う。実は、私こそ狂っていて、私が「あいつ馬鹿だなぁ」と思っているその馬鹿こそが、至って健全な人なのかもしれない。

ときどき、私も相手の云っていることがさっぱり分からないことがある。ひょっとしてオレは馬鹿か？と思ってみる。もし私が、相手の考えていることの先まで読めるほど明晰な洞察力と分析力を持っていたなら、相手のいっていることはたちどころに分かってしまうかもしれない。分からない、とはどういうことだろうか？同じ人間の考えていることなのに...

バカにつける薬、もしそんなものがあって、それを私につけて、相手の云っていることが理解できたなら、それは、私がバカだったことの証明にもなろう。でも、それならそれで、私は納得するだろう。

2001/01/23

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